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2008年09月10日

ミスをシステム全体でカバーする

寺井和雄

 設計の仕事は機体の数多くの生産工程の中でも最上流にあります。だから「下流の工程に対して責任がある」ことは常に自覚して、設計者は仕事をします。設計から次工程以下への出力は、図面がすべてです。

 図面ミスは許されません。社内外の経費と顧客信頼へのインパクトが甚大だからです。ミスは、寸法誤記など単純なものから、部品を組立て・取付けて生じる部材間の干渉という複雑なミスまで、さまざまです。

そこで、ミスは、複数の目で点検すれば無くなるという考えで、グループ検図が行われます。若手は誤記、ベテランは、機能やシステムの観点からチェックします。こうして設計ミスが無くなっても、機体の製造時や運用時に不具合は発生するものです。それは、図面ミスではないが、設計に落ち度があるからです。

昔、運用中の大型ヘリコプタの重要構造部材で致命的な割れが見つかりました。原因は、部材の組付け工程で取付けボルトを規定値以上のトルクで締付けたために、ボルト先端が想定外の部位に接触し、そこに引張り応力が長年じわじわとかかって、発見しにくい「応力腐食割れ」に至ったものでした。
直接原因は、組付け工程のミスでしたが、たとえ製造ミスが起きても、2次ミスが生じないようにと、結局、部材の寸法を設計変更し(いや、させられ)ました。この考え方がフール・プルーフ設計です。

昨夏、中華航空のB737が那覇空港に着陸後、炎上する事故がありましたが、直接原因は、1本のボルトが燃料タンクを突き破ったためでした。ある部材の整備時にワッシャーを入れ忘れてボルト/ナットを締めた為に、部材の穴径よりも外径の小さいナットが部材を通り抜けて、ボルトが脱落したものでした。
おそらく軽量化のためにナットを小さくしたのでしょうが、整備ミスまで想定していなかった。機体製造元のボーイング社は、対策としてナットの外径を部材穴径よりも大きくし、ワッシャーを忘れてもボルト/ナットが抜け落ちないようにしました。

製造/運用ミスをどのように想定してフール・プルーフ設計するか、そこにメーカーや設計者に蓄積された技術と顧客運用のノウハウが生かされます。

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寺井和雄
元・川崎重工業の設計・営業部長。現在はヒューマネット顧問。航空技術分野で歴戦の設計エキスパート
 
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